患者様の痛みを和らげた日帰り手術を心がけています
当院では、患者様の安全を第一に考慮しながらも、痛みを緩和できるように努めております。手術では外科医が大きな責任を担っていますが、麻酔科医も同様に、患者様の痛みをコントロールし、不快感の少ない手術を行えるようにするために重要な役割を担っています。手術の種類に関係なく、麻酔科医は術後の痛みをなるべく軽くするために、麻酔計画を行います。
実際のところ、痛みの大きさは患者様によって異なるだけでなく、手術では多少なりとも傷ができるため、痛みを100%なくすことはできません。手術では患者様が耐えられる程度まで痛みを軽減することを目標に麻酔薬の量をコントロールします。また、ご帰宅後もなるべく負担が少ない日常生活を送れるように、鎮痛剤を使用し不快感や痛みをなるべく早めに軽減できるようご支援いたします。
腹腔鏡手術と鼠径部切開手術の違いについて
当院の鼠径ヘルニア手術は、腹腔鏡を使用した方法で行います。以下では、痛みや傷口、手術後の回復などに関して、これまでの鼠径部切開手術と比べながら解説いたします。
傷口を最小限にして痛みを抑えた手術
お腹の傷が痛む原因は、切開した傷と腹膜が呼吸によって引っ張られて動くことによるものです。したがって、傷口が大きければ大きいほど、痛みも大きくなります。
項目 | 腹腔鏡手術 | 鼠径部切開手術 |
---|---|---|
傷の範囲 | 約5mmの傷が3つできる。 | 5~6cmの傷が1つできる。 |
痛みの度合い | 傷口が小さいため、痛みも生じづらい。 | 傷口が大きいため、痛みもそれに伴い強くなる。 |
帰宅できるまでの期間 | 早期に回復し、ご来院から3~4時間で帰宅が可能となる。 | 2~3日の入院をお願いする場合がある。 |
従来の切開術よりも術後の回復が早い
当院で施行している腹腔鏡手術は早期回復が見込め、日帰り治療をご案内できます。一方で、切開手術では2~3日の入院をお願いすることがほとんどです。また、当院ではより直径が細いカメラを使うことで、傷口を最小限に留め、患者様になるべく負荷をかけないようにしております。そのため、ほとんどの患者様は、手術の次の日から仕事復帰が可能となっております。また、手術当日からいつも通りの日常生活を送れるほか、シャワー浴も問題ございません。
麻酔で手術中の痛みを軽減
痛みを小さくするためには、傷の大きさはもちろん、患者様に合わせた麻酔を使うことも大切です。当院では、全身麻酔と局所麻酔を併せて行うことで患者様の痛みを軽減し、術後の疼痛も少なくなるように配慮しております。
全身麻酔:患者様に応じて麻酔の量をコントロールします
全身麻酔は、手術の終了時間に合わせて患者様が覚醒するよう適切にコントロールされています。術後はリカバリールームで1時間ほど休んでいただき全身麻酔や手術からの回復具合をチェックします。その後は歩行が可能で、尿道カテーテルも挿入する必要はありません。麻酔が早期に切れてしまうと、術後の痛みが起こる恐れがあるため、創部に局所麻酔を併せて使うことで痛みを小さくします。
局所麻酔:覚醒後の痛みを小さくします
全身麻酔の効き目は術後すぐに切れるため、手術終了直前に、創部に局所麻酔を使用して術後の痛みを軽減します。
効果時間は1~2時間です。その後の痛みに関しては内服薬で対応します。
よくある質問
「腹腔鏡手術は本当に大丈夫なの?」と心配になっている方も少なくないと思います。以下では、患者様からのよくある質問とそれに対する回答について説明いたします。
術後すぐに家に帰っても本当に問題ないのでしょうか?
傷が小さい腹腔鏡手術と麻酔法によって、日帰り手術をご案内できます。また、ご帰宅前に5日分の痛み止めをお渡しするため、術後の痛みを制御することができます。
痛みが強くなった場合は、頓服薬を追加で飲むことをお勧めします。数回飲めば痛みが軽減することがほとんどですので、ご安心ください。
麻酔が切れた後の痛みが不安ですが、どうすれば良いでしょうか?
局所麻酔の効果は1~2時間程度持続し、その後は内服薬での鎮痛が可能です。
術後の傷跡について詳しく教えてください。また、消毒をした方が良いでしょうか?
傷跡は5mm程度と小さく、皮下縫合のため基本的に抜糸も不要です。傷口はガーゼ付きの透明シートでガードされているため、消毒を行うことも不要です。透明シートは術後2日目にはがしてください。傷跡は次第に消えていき、1年経つと目立たなくなります。
分からないことがあれば、遠慮なく当院までご相談ください。
腹腔鏡手術と麻酔で安心・安全に行う鼠径ヘルニアの日帰り手術
麻酔科医は、痛みを小さくすることはもちろん、患者様に安心安全な手術を提供することにも注力しております、身体への負担が少ない腹腔鏡手術のほか、患者様の全身状態を常時監視しながら麻酔を行うことで、術後の痛みがなるべく生じないようにしております。
術後の痛みによって日常生活に支障をきたさないように、適切な対応を行いますので、不安なことがあれば遠慮なく当院までご相談ください。
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