機能性ディスペプシアとは
胃もたれや胃痛などの症状が長引いているにもかかわらず、胃カメラ検査などでは器質的な異常が見つからない病気を、機能性ディスペプシア(FD :functional- dyspepsia)と呼びます。炎症、潰瘍、がんなどの病変は見つかりませんが、機能的異常などによって症状が現れるとされています。
従来は、神経性胃炎・慢性胃炎と診断されていました。しかし、胃炎は胃粘膜で炎症が起こっている状態であるにもかかわらず、症状が起こっていても病変が発見されない状態で胃炎と診断されると、最適な治療を行うことができません。そのため、昨今は、胃痛などの症状が起こっているのに、複数の検査をしても器質的異常が発見されない場合、炎症があっても無くても「機能性ディスペプシア」と診断し、最適な治療を行えるようになっています
症状
- 食後の胃もたれ
- 胸焼け
- みぞおちの痛み
- 早期膨満感(すぐお腹が一杯になって食べられなくなる)
上記の4つが機能性ディスペプシアの代表的な症状です。機能性ディスペプシアはよくある疾患ですので、このような症状にお困りの方は、一度当院までご相談ください。
原因
運動機能障害
貯留機能の障害
胃の中に食べ物が入ると胃は拡張しますが、食べ物が入っても胃の上部が拡張しない状態を貯留機能障害と呼び、みぞおちの痛みや早期膨満感などの症状が現れます。
排出機能の障害
十二指腸への排出機能の異常によって、胃の中の食べ物が長時間滞留し、胃もたれなどの症状が現れます。なお、逆に十二指腸へ早く排出されてしまうことで、痛みなどが生じる場合もあります。
貯留機能と排出機能の関係
胃に食べ物を貯める貯留機能と、十二指腸に送る排出機能は関係性が深いと言われています。貯留機能に異常が生じると、消化が不十分な食べ物と胃酸が十二指腸に送られます。そうすると、今度は十二指腸が胃の排出機能を抑制するように促すことで、胃からの排出が遅くなります。このような負のスパイラルによって、症状が現れます。
胃の知覚過敏
口内の知覚過敏はよくあるものですが、胃でも知覚過敏が生じます。胃で知覚過敏が生じると、刺激に過剰に反応するようになり、痛みなどに敏感になります。そのため、胃酸が分泌されるとみぞおちの痛みや胸焼けなどが起こりやすくなったり、少し食べただけでお腹一杯になったりすることがあります。
胃酸分泌
十二指腸に胃酸が送られると胃の運動機能が落ちるため、胃もたれなどが生じやすくなります。また、知覚過敏になると胃酸分泌に対して敏感になるため、胸焼けや痛みなどが生じる場合があります。
社会的・心理的要因
胃などの消化管の機能は自律神経が制御しています。自律神経の働きは社会的・心理的要因に左右されやすいため、ストレスなどで自律神経が失調すると、機能性ディスペプシアに繋がりやすいと言われています。
ピロリ菌
ピロリ菌は胃粘膜に棲みつく細菌であり、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの発症を招きます。機能性ディスペプシアとピロリ菌感染の関連は明確には分かっていませんが、機能性ディスペプシアとピロリ菌感染を併発している方が除菌治療を受けることで、機能性ディスペプシアの症状が解消したというデータがあります。除菌治療によって様々な病気の発症率が低下するため、当院ではピロリ菌に感染している方に除菌治療を推奨しています。
治療法
生活習慣の見直し
早食いや食べ過ぎなど胃に負荷がかかる食習慣・食生活を見直し、飲酒・喫煙を控えることなどによって、症状の改善や再発予防が期待できます。当院では、患者様が続けやすいやり方を丁寧に指導いたします。
薬物療法
患者様のお困りの症状や病状に応じて、胃酸分泌抑制薬、消化管運動機能改善薬、少量の抗うつ薬、漢方薬などの中から適切なお薬を選択します。昨今、「アコチアミド」という新しい作用機序がある消化管機能改善薬が普及したことで、従来のお薬では治療効果が不十分だった方にも効果的な治療を行える可能性があります。このような新薬についても、注意事項や効果について丁寧にご説明し、患者様のご希望に合わせてお薬を処方しますので、ご不明点があれば何なりとお申し出ください。